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サークルの悩みや壁をこんな工夫で乗り越えよう!

サークル編成をこんな工夫で取り組んでみよう!

はじめに

モノづくりの製造現場からスタートしたQCサークル活動などの小集団改善活動は,製造・生産技術・品質保証部門以外の事務・販売・サービス,医療・福祉など,現在では幅広い業界・業種にも普及・拡大しています。
特に,事務・販売・サービス,医療・福祉などの分野では,メンバー一人ひとりが別の業務を担当していることが多いので,チーム編成が難しく共通テーマがなかなか見つからないなど,改善活動を進めている中での悩みをよく耳にします。
そこで,「サークルの悩みや壁をこんな工夫で乗り越えよう!」と題して,運営面で特色のある工夫をしているサークルを紹介します。支援者・推進者・推進事務局,そしてリーダーのみなさんにとって,QCサークル活動(小集団改善活動)を運営・推進するうえでの参考にしていただきたいと思います。

出典 QCサークル誌 2017年7月号

QCサークルの基本的な編成方法

QCサークルは,第一線の職場で働く人たちで編成されます。一般的には第一線の職場の組織単位は同じような仕事を担当している人たちで,1人の監督者と数人(10人以下の場合が多い)の部下で構成されるため,QCサークルは職場組織の最小単位で1つのQCサークルをつくるのが基本的な編成方法になります(図・1参照)。

図・1 サークル編成の基本(『QCサークル』誌2011年2月号No595P27図・2より引用)

QCサークルのメンバー数は,一般に5〜7名が適当で,職場組織の最小単位の人数にほぼ一致します。これ以上の人数になると会合の日時が合わせにくくなり,会合に参加しても発言しない人が出やすいことや,なかなか全員の共通認識が得られないなどの問題が発生しやすくなります。

サークル編成の工夫

QCサークルの編成は,活動の目的に合わせて編成する必要があります。活動を進めるうえでは,職場単位で編成するのが基本ですが,以下のような編成の仕方もあります。

1)C型サークル編成
できるだけ同じような仕事をしている人たちでQCサークルを編成するサークル型で,時には一人ひとりの仕事がすべて異なっている職場もありますが,1人ではQCサークルはつくることができないので,仕事の類似性・関連性を考えて2〜3人以上になるようにまとめるとよいでしょう(図・2参照)。

図・2 職場が異なっている人たちで編成(『QCサークル』誌 2011年2月号 No595 P27 図・3より抜粋)

2)T型・P型サークル編成
テーマ型やプロジェクト型と称して,異なる職場からメンバーが集まり,部門にまたがる問題・課題を管理者または専門技術者の指導のもとで活動し,テーマが解決するとサークルを解散するタイプです。主として有形効果をねらった活動です。

3)CF型サークル編成
クロスファンクション型と称して,P型と似ていますが,部門の枠を超えての横断的な活動で管理者主導のもとで活動し,テーマが解決すると解散するタイプです。このタイプも主として有形効果をねらった活動になります(図・3参照)。

図・3 テーマごとに関係する部署のメンバーを集めて編成(『QCサークル』誌 2011年2月号 No595 P27 図・4より抜粋)

QCサークルの連合

従来,自サークルだけで職場の問題をテーマに取り上げ解決してきましたが,最近では以下のようなテーマを解決するために,他サークルとお互いに協力し合って活動しなければ解決できない場合が多くなっています(図・4参照)。

1)自サークルだけでは解決できないような大きい問題をテーマとする場合
2)同一職場でもQCサークル間にまたがった問題をテーマとする場合
3)異なる職場間の問題をテーマとする場合

実際には,次のような工夫でテーマ解決に取り組んでいます。

1)複数のサークルが合同して1つのテーマに取り組む
2)異なるサークルが情報を交換しながら,それぞれ同じテーマに取り組む
3)大きなテーマを分割して,異なるサークルがサブテーマとして取り組む
4)メンバーの一部または全部が別のQCサークルに参加する

図・4 関係するラインのサークルと連合して編成(『QCサークル』誌2011年2月号No595P28図・5より抜粋)

以上のような編成方法がありますが,当初はできるだけ仕事内容の同じ人の集まりで編成することが望ましく,それがQCサークル活動の運営をやりやすくし,継続的に進めていく秘訣でもあります。

QCサークルの分割

QCサークルのメンバー数は5〜7名が望ましいですが,職場の人数が10名を超える場合は,2〜3サークルに分割するか,2〜3のサブサークルを編成するとよいでしょう。
このようなQCサークルには,第一線監督者が含まれない場合もあり,仕事の事実上の責任者がQCサークルリーダーとなります。たとえば,製造業では第一線での監督者補佐,サービス業ではチーフ・パート社員・専任社員など,また,交替勤務の場合には交替直ごとの責任者または専任者がリーダーになるなどの工夫をするとよいでしょう。

サブサークルに分けるやり方

今までのQCサークルを2つ以上のサブサークルに分け,リーダーを務めてきた第一線監督者は総括リーダーとして,QCサークル全体(親サークルと呼んでいる場合もある)の面倒を見るやり方になります。この場合,サブサークルのリーダー(サブリーダー)はそれぞれのサブサークルから選ばれることになります(図・5,表・1参照)。

図・5 サブサークルの編成(『QCサークル』誌 2011年2月号 No595 P28 図・6より抜粋)

表・1 サブサークルを編成する場合のケースと内容
ケース 内容
1 交替制の場合 交替制勤務を実施している企業では,直ごとにサブサークルを編成する場合もある。1ヵ月か2ヵ月に1回くらい全体会合を持ち日常活動はサブサークルごとに行う。
2 前後工程に分ける場合 仕事が準備工程と本工程に分けられ,班長が前後工程を監督している場合,2つのサブサークルに分ける。時々合同会合を持つ。たとえば,「良い製品をつくる」といった目的が1つである場合がそれである。
3 スーパーマーケットや外食産業などの場合 この場合は,パート社員の希望によって前半(午前または昼間)勤務と後半(午後または夜間)勤務に分けてサブサークルを編成する。販売方法も前半と後半では違いがあり,活動の仕方も少し異なる。

2つ以上のサークルに分けるやり方

QCサークル活動にメンバー全員が自信を持ってきた場合は少人数のメンバーで,数多くの職場の問題を解決していこうとしたり,リーダーの体験を多くの人ができるようにということで,サークルを分割するやり方もあります。
ただし,初めの段階で人数を分けることに抵抗があれば,まず,全員で1つのQCサークルを結成して活動を進め,6ヵ月〜1年くらい経って,活動の進め方が理解できた時点で2〜3のサブサークルを編成するか,2〜3サークルに分割するとよいでしょう。

以上のように,自サークルだけでは職場の問題や課題を解決できない場合も多くなっていますので,他サークルとの協力や工夫をしながらテーマ解決を目指してみてください。

事例1 部門1サークルの編成で部門ごとに活動を展開《C型サークル編成》

お客様の笑顔のために
〜ブーランジェ・オウミから始まる成長ストーリー〜

アクシアルリテイリング(株)原信近江店「ブーランジェ・オウミサークル」
(第8回事務・販売・サービス部門全日本選抜QCサークル大会要旨集より)

サークル編成の背景

アクシアルリテイリング(株)「ブーランジェ・オウミサークル」が所属する店舗には8つの部門があり,部門単位でサークルが編成されてレギュラー社員である部門のチーフがリーダーを務め,4時間勤務のパートナー社員はメンバーとなって活動しています。
交替制勤務で会合に参加できないメンバーがいることで活動が低迷する話はよく聞きますが,部門単位のサークル編成としてのメリットを十分活かして,議題についての意見をメモしてもらったり,会合を午前と午後の交互に開催し個別に意見を聞くなど,間接的な活動への参加で勤務時間が違っても意見交換できる工夫をしています。

図:QCサークルの編成

こんな工夫で

アクシアルリテイリング(株)では「お客様満足」を実現するためにTQMを経営の根幹に据えて活動をしています。お客様により良い商品をご提供するために,QCサークル活動で商品1品ずつに改善が加えられています。レジではお買い上げいただいた商品を袋詰めするサービスも実施しており,QCサークル活動での実用化が進み,今では原信・ナルスを代表するサービスとして定着しています。
お客様が買い物する店舗では,レギュラー社員と4時間勤務のパートナー社員,アルバイト社員で構成されていますが,朝9時から深夜12時までの営業を基本とし,朝,昼,夕方,夜間の交替制勤務で,お客様には快適に買い物してもらうために商品の製造や補充,鮮度管理作業をどの時間帯にだれが担当するかを明示した作業割当表を使って効率的に作業しています。

図:店舗の運営

学びどころ

この「ブーランジェ・オウミサークル」は店舗内の8つの部門で,1部門に1サークルの基本的なC型編成で活動していますが,朝,昼,夕方,夜間の交替制勤務で同じ仕事をしている中,会合に参加できないメンバーとは,メモによる意見交換や会合を午前と午後の交互に開催して個別に意見を聞くなどの工夫で活動を進め,お客様が快適に買い物できるよう商品の製造や補充,鮮度管理作業などをどの時間帯に誰が担当するか,作業割当表を使って効率的に作業できるような工夫をしています。会合に参加できないメンバーからの意見の求め方も大変参考になると思います。

事例2 24時間体制の中でのプロジェクト型 サークル編成で全体のレベルアップ《P型サークル編成》

蘇れ,無線小隊
〜復活へのF.A.R.作戦〜

航空自衛隊 千歳基地 第2航空団 整備補給群 装備隊 無線小隊「AvionicsKeeperサークル」
(第9回 事務・販売・サービス部門 全日本選抜QCサークル大会要旨集より)

サークル編成の背景

「AvionicsKeeperサークル」は,24時間体制のシフト勤務のため全員で活動することが難しいことから年度が替わるとサークルを解散し,また新たに結成する「プロジェクトチーム型式」を採用しています。数年前に比べて職場はとても忙しくなっており,時代の流れなのか仲間意識も希薄になっていると,ベテランからは小隊の危機を感じさせる話がありました。

こんな工夫で

職場を取り巻く環境の変化からスクランブル発進回数の増加や装備品の追加により,1人当たりの仕事量が増えて数年前に比べて職場は大変忙しく,1改善活動の成果を出せない,2忙しくて心に余裕がない,3若手はベテランに頼り切り,など無線小隊の危機を感じさせる事態となってしまいました。
「AvionicsKeeperサークル」は24時間体制のシフト勤務なので,若手と中堅の16名が均等に経験できるよう全体のレベルアップを目的として活動していますが,ベテランは活動に加わらず支援する立場でフォローします。
無線小隊の将来を担う佐々木さんが復活のため,「何事にも楽しく取り組むこと」で厳しい規律の中でも高いモチベーションを維持できると考え,復活へのシナリオを検討しました。
作戦を立てたところで,個々のレベルを把握するための「知識ベース」と,伝統を意識した「人間性ベース」の両方を兼ね備えた人物を「QC人間」とし,ありたい姿に設定しました。
勉強会終了後の模擬試験では全員知識ベースに合格,その勢いで改善に取り組み,成果を得ることで大きな達成感を味わい,ベテランに頼らない活動で自立できるまでに成長し,プロジェクト型式によるスパイラルアップに成功しました。

図:復活へのシナリオ

学びどころ

航空自衛隊千歳基地第2航空団においては,サークル活動の仕組みとして「プロジェクト型のサークル編成」により,若手・中堅が均等に経験できるよう全体のレベルアップを目的として活動し,大きな成果に結びつけています。一般的には同一職場内やサークル同士では解決できない問題・課題を各部署からの専門知識のあるメンバーが集まって活動し,解決できたら解散することで,組織目標が達成できる有効な活動になります。

事例3 サークルメンバーを10名以下に再編成する中で新たな活動がスタート《サークルの分割(再編成)》

転んでも起き上がるダルマスピリットで成長した
ダルマーズサークルのあゆみ

(株)ジェイテクト 奈良工場 工務部 総務課 「ダルマーズサークル」
(第9回事務・販売・サービス部門 全日本選抜QCサークル大会要旨集より)

サークル編成の背景

(株)ジェイテクト 奈良工場 工務部総務課では,サークル発足時に取り組んだテーマがルーチン業務以外の突発業務発生への対応などで,テーマ完了までたどり着けないことが多く,たまに完了しても目標達成できずに終わることも多くありました。そこで,新たな活動のスタートに合わせ,サークルメンバーを10名以下に再編成する提案があり,「ダルマーズサークル」においても,再編成によって推進者およびリーダーが代わる中で活動が再スタートしました。

こんな工夫で

「ダルマーズサークル」は,総務課内のサークルで,ほとんどのテーマは他人から言われたことの対策として苦情処理が多く,やらされ感は100%と違和感を強く感じていました。
新リーダーは,社内推進委員会が主催するリーダー研修に参加し,自分が変わることの重要性に気づき,メンバーのマインドを変える前に自分を変える必要性を感じて,つねに問題意識を持つようになりました。
新メンバーが仕事以外の触れ合いでコミュニケーションも活発になり,お互いの仕事を体験することで自分の仕事が一番大変だと思っていたことの誤りにも気づいた瞬間でした。
仲間の困りごとを改善することで,予想以上の成果につながり,大きな達成感を味わうことができました。今まで見向きもしなかった工場内の勉強会や会議にも積極的に参加し,問題発見能力が身につくなど,大きく成長することができました。

図:サークル再編

学びどころ

この「ダルマーズサークル」は,メンバー一人ひとりが別業務を担当しており,やらされ感を強く感じていましたが,10名以下の再編成で新リーダーや新メンバーが仕事以外の触れ合いでコミュニケーションが活発になり,自分の仕事が一番大変だと思っていたことの誤りに気づき,仲間の困りごとを改善することで大きな達成感を味わえた瞬間とのことでした。
QCサークル活動を進める中でのメンバー数は,一般に5〜7名が適当とされています。やはり10名以上になると会合の日時が合わせにくい,会合での発言が少なくなるなど,全員の共通認識も得られにくくなって問題が発生しやすくなります。(佐藤直人)

この記事は『QCサークル』誌2017年7月号に掲載されたものです。
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