私たちもQCサークル活動(小集団改善活動)しています④
機関誌『クオリティ・クラブ』※2024年7月・8月号(No.45)に掲載された記事です。
※機関誌『クオリティ・クラブ』 – 品質管理なら日本科学技術連盟 (juse.or.jp)
活動のベースをアナログからデジタルへ情報共有に社内イントラネットを活用
株式会社青木製作所
量産金属切削加工部品の製造販売や試作などを手がける株式会社青木製作所(神奈川県横須賀市,小岩井豊己社長)は2022年にQCサークル活動を始めた。参加人数は22人。現在のチーム数は2つである。もっとも,同社は1980年から2000年まで,主力取引先である日産自動車との連携で活動していたことがある。したがって,正しくは新規の活動開始ではなく,再始動だ。しかし,往年の活動の様子を知る人はごくわずか。若い社員の心を動かし,再始動の旗振り役を務めた総務部の水野貴之さんに新たな体制の重点や目標などを聞いた。
お話を伺った,株式会社青木製作所 COO(最高執行責任者) 水野貴之さん
1.社内努力を取引先に訴えるために活動を再開
―同業他社には真似のできない,貴社の事業における強みはなんですか。
当社は鋳物製造を手がける株式会社コイワイ(神奈川県小田原市,小岩井豊己社長)のグループ企業の一つです。このため,素材の調達から機械加工,表面処理,熱処理などの二次加工,検査,出荷までの一貫生産体制を整えていることが大きな強みです。工程ごとに複数の別会社が関わるのではなく,一気通貫で対応できる点は,コスト対策や納期短縮などの面で大口の取引先様から重宝がられています。製品をつくるばかりでなく,多軸加工機やガンドリル機,アッセンブリ機,気密試験機などの専用機類を自力で設計,開発し,自社工場で活用するといった技術力にも定評があります。
―QCサークル活動はいつ,どのような経緯で導入されたのですか。
現在の活動は2022年に始めたのですが,実は1980年から2000年まで,QCサークル京浜地区に登録していて,日産自動車様と一緒に活動していたことがあります。再開するまでの20年あまりのブランクは自動車産業を取り巻く当時の大きな環境変化によるものです。立て直しに追われ,活動に十分な時間が割けなくなったのです。例えば,軽量化対策で従来の鋳物が樹脂に置き換えられる自動車部品が増えました。同じころに主力取引先の方針変更がありました。こうして,安定していた経営状況がこれまで経験したことのない低迷期に突入し,さらに新型コロナウイルス感染症の蔓延も響きました。 その時期に価格交渉で訪問したお客様の1社から「肝心の社内努力はどうなっているのか」と迫られたのです。 その問いかけに対する「解」としてたどり着いたのがかつて実践したことのあるQCサークル活動でした。
―再開したQCサークル活動は貴社の事業運営や業務改善にどのように役立っていますか。
これまでは何をするにも「個」の動きがほとんどでした。その点,QCサークルはチームワークですから,初めて参加する若い人には集団活動が新鮮に受け止め
られたように思います。一人ではできなくても,みんなでやればできる,といった気持ちは社内の雰囲気を良くすることにも役立ったと感じます。
2.トップの理解度で大きく変わる活動成果
―水野さんご自身はQCサークル活動にどのように関わってこられたのですか。
青木製作所における社歴は浅いですが,QCサークル活動には16年あまり関わってきました。これまでは社内に対する普及,推進ばかりでなく,QCサークル神奈川地区の幹事会社の仕事を5年ほどしていました。事務的な活動のほか,講師として登壇したこともあります。 青木製作所では,これまでに培ってきたさまざまな手法や経験してきた事例の数々をうまく活用していけたらと考えています。
―現在のQCサークル活動を推進していく上で心がけているのはどんなことですか。
QCサークル活動だけに限らないことだと思いますが,どのような形であれ,成功体験を味わわせたいと常に考えています。ただ,何もないところから味わうのは至難です。ですから,まずは,QCサークル活動とは何か,それはどのような仕組みか,活動でどのような成果がもたらされるのか,といったことをしっかりと学ぶ環境を整えました。このため,QCサークル神奈川地区の世話人の方に講師を派遣していただいたり,活動の流れをレクチャーしていただいたりしました。親身になって協力していただいた神奈川地区事務局には本当に感謝しています。
―現在の活動はどのように進めていますか。
後で詳しくお話ししますが,社内のイントラネットを使ってプロジェクトを登録します。上長承認の後,活動の開始日と終了日,定期的なミーティングや作業の
スケジュールを設定。それを踏まえて会合を開きます。プロジェクト推進時の調査,活動項目には必ず5W1Hで決め事を設定。プロジェクトの現状把握や改善の的が絞られたらQCストーリーを参照し,改善を進めます。活動を踏まえて半期に1度,成果報告会を開きます。
―QCサークルを含む小集団活動にはどのような考えをおもちですか。
当社の「小集団活動規則」では「会社と社員が共に成長し,企業文化を育てることを目的とした社員の自主的なサークル活動に対し会社側が補助や助成をおこ
なう」と規定しています。つまり,現場で実際に活動する従業員に対する会社の使命を定めているわけです。この際の会社はイコール経営者ですから,トップの理解が活動の成否のカギを握っていると思います。前職時代も含めて言えるのは,トップがきちんと理解していないとQCサークルの活動そのものがないがしろにされるということです。
3.活動の活性化に 貢献した 社内イントラネット
―貴社のQCサークル活動にはどのような特徴がありますか。
一言で言えば,ペーパーレス化を図ったことです。汎用性のあるオフィスソフトを導入して,すべての作業をアナログからデジタルに移しました。これまでの
活動はすべて紙ベースで進められてきました。打ち合わせや会合のたびに紙が増え,ファイルがどんどん厚くなる。それをソフトウエアやアプリに置き換えたことで,いつでもどこからでも情報にアクセスできるようになりました。若い従業員が多いので,無理なく導入することができ,参加意欲も高まったと思います。
―活動推進ツールとして社内イントラネットに着目した狙いは。
QCサークル活動を活性化するためにソフトを導入したのではなく,別の理由で導入したオフィスソフトがQCサークル活動にも使えるという順序です。もともとは,普段触れることのないパソコンを現場の人たちに操作してもらうことが目的でした。社内の業務ばかりでなく,将来のスキルアップにも使えるからです。 パソコンになじむためにメール交信やスケジュール管理などから始めたのですが,そのソフトの「タスク管理」とQCサークル活動の相性が良いことが分かったので,全面的に紙から切り替えることにしたのです。
―これまでの取り組みで見えてきた課題と対策についてお聞かせください。
QCサークル活動に対するプライオリティーを上げることです。時代が違うといえばそれまでですが,私が現役のプレイヤーだった時代には,仕事以外の時間で残業代もつけないでやっていました。もちろん,現在では通用しないし,絶対にしてはいけないことです。参加意欲を高める方法の一つはある種のインセンティブをつけることだと思います。現在は限られた参加者ですが,将来は文字通り全員参加の活動として全国大会でも発表できるレベルにまで磨きをかけたいですね。
―現在の活動に対する評価や今後の活動に寄せる期待をお聞かせください。
再始動して2年とはいえ,参加している従業員の大半にとっては初めての経験です。にもかかわらず,初年度に比べて活動の内容は確実に高まっていると思います。かつての活動を知っている古参のメンバーには,これからの活動を担う若い人たちを育てるという立ち位置で適宜,助言してもらっています。長らくQCサークル活動に携わってきた者として痛感するのは,QCサークル活動の成果は必ず経営につながるということです。改善につながらない活動は一度も見たことがありません。その意味で,現在の活動を進めている若い力に期待しています。
(聞き手:ジャーナリスト 伊藤公一)
■株式会社青木製作所
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