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『QCサークル』誌、こうして活用しています!      第3回 日本製鉄株式会社 関西製鉄所

このコーナーでは、『QCサークル』誌を多部数ご購入いただいている企業・組織の推進者のみなさまにインタビューして、『QCサークル』誌の効果的な活用方法や勉強方法などを紹介していただきます。みなさまの『QCサークル』誌活用のヒントにしていただければと思います。
第3回目は、日本製鉄株式会社 関西製鉄所 生産技術部 生産技術室課長の木下和香様にお話を伺いました。——————————————————————————–                  ・2年前から新規でご講読いただくようになりましたが、その動機はなんだったのでしょうか。

2012年に住友金属工業と新日本製鐵が経営統合されて今の会社になりました。私は住友金属に入社しましたが、ここ和歌山でのJK活動は、一点豪華主義的に、コスト効果の大きいところを狙って活動に取り組むということがベースになっていて、職場が年間を通じて継続的な活動するという意識が希薄でした。
そうした中で、当時の副所長が、まずは社外を知ろうということから、『QCサークル』誌を読んで、他社がどんなことに取り組んでいるのか、そもそもサークル活動って何だろうというところから学ぼうと、購入するようになりました。
当時は、いきなり現場の一人ひとりに広めていくのは困難だということで、まず最初は支援者である部長から学んでもらおうということになり、部長単位に配ったところからスタートしました。

※JK活動(自主管理活動):企業内の自主的な小集団改善活動の総称。主に鉄鋼関係の会社で使われている。

 

・貴所のJK活動における本誌の位置づけをお聞かせください。

良いものがあれば参考にし、これに自分たちの工夫を織り込んで、また別の視点で活動するというような、教科書というより参考書的な位置づけで活用しています。

・現在、貴所では、雑誌がお手元に届いた後、どのような形で配付されていますか。

                                     

基本的に各部門の部長に『QCサークル』誌を渡しています。そして、自分の部ではどういった活動の取り組み方針を作るのかをまず考えてもらい、そこから部の方針で各所属職場ではどういった取り組みをさせるのかと、だんだん細かく、支援者である部長から指導するようなツールとして使っています。                                                                                                                                   生産技術室 木下課長                                                                

・社員の方に本誌を読む機会を与えていただくようになったわけですが、その結果、この2年間の間に、サークルに何らかの変化、効果がありましたか。

私ども事務局に、「『QCサークル』誌に載っているこの手法はどうしたら学べるのか」、「こうした手法の教育はないのか」、「もっと手法を知りたいので、詳しく書いてある参考書を教えて欲しい」といった質問が、『QCサークル』誌を配り出してから特に多くなりました。
たとえば、「各部長が、『QCサークル』誌の事例を見て、これと同じことをやりたいと言っているのですが、自分たちはどういう手法で取り組めばよいのか、見たこともない手法が書いてあるので教えてください」という相談も受けるようになりました。
それで先般、日科技連のQCサークル指導士の教育を、JK連合会(JK活動の円滑な推進や活性化を目的として、各職場の班長クラスで構成される組織)のメンバーに受講してもらいました。今後は、QCサークル指導士の資格を持ったJK連合会のメンバーが、各サークルに手法を教えるような体制づくりをしたいと思っています。
具体的なサークルの変化としては、QC手法をよく使うようになりました。今までは、改善が見えているというか、自分たちが考えられる活動を直感的に行って成功していたものが多かったようです。
また、最終的な活動の目的に対して、活動しているうちに手段が目的になってしまうようなことがままありました。今はきちんと真因追求ができているところに変化を感じます。

・サークルの方だけでなく、支援者である部長のみなさんも『QCサークル』誌を読まれているとのことですが、部長の方々にも何らかの変化がありましたか。

これまでは係長層の支援が中心でしたが、サークル誌をきっかけに部長層の支援も増えました。『QCサークル』誌には、支援者としてどのように協力していくかという記事も多いことから、今では部長層が直接現場にJKの指導をするというケースも多くなりました。
ある部長は、「この記事に書かれてあることを僕はこう思うけど、君たちはどう思うか」というような質問を、所属するサークルメンバー全員にメールで投げかけたりしています。
年間の行事に、「激励巡視」というものがあります。これは、副所長が各部門を回って、副所長と所属長が一対一でJK活動の活動方針について議論し合うものですが、そこの場においても、『QCサークル』誌にある他社の事例が参考になっており、いいものは積極的に取り込むようにしています。

・JK連合会のメンバーの方の本誌に対する評価はいかがでしょうか。              

            JK連合会と事務局                     JK連合会では、現場のOJT活動を企画しています。                                                                                                 停滞しているサークルに対して「『QCサークル』誌のこの事例を参考にしてみては」といったアドバイスをするために重宝しています。

・実際に活動されているサークルリーダー、メンバーの方々の本誌に対する評価はいかが
でしょうか。

事前にサークルに質問したところ、大変多くの意見が寄せられました。一言でいうと、とても好評です。
最近の記事にありましたが、現場目線で職場の活動を牽引するようなサークルリーダーの記事が参考になったようです。また、特にグラフの使い方、見せる化が大変参考になっているようです。

・特に活用、参考にしていただいている記事はどの記事でしょうか。

コロナ禍が長く続いているので、2020年10月号の「コロナ後の社会に対応するサークル活動と情報機器活用」などは、すごく役立ちました。とりわけオートワークス京都の記事は、このコロナ禍において、どういった活動をしていくのかという運営方針が載っていたので、とても参考になりました。

・本誌をより有効に活用してもらうべく、事務局、あるいは上の立場の方から、何らかのしかけをされていますか。

事務局からは特に発信するということはしていません。基本的には、サークルから相談があったときに、目星しい記事を紹介して薦めたりしています。
事務局からというよりは、各所属長が停滞しているサークルを救うときのコミュニケーションツツールとして『QCサークル』誌を活用しています。

・いろいろな活用の仕方があると思いますが、サークルの方々は本誌をどのように活用されていますか。また、ユニークな活用の仕方をしているサークルや部署があれば、ご紹介ください。

JK活動初心者の教育用として、『QCサークル』誌を用いた勉強会を開いて使っています。たとえば、次のような、面白い使い方をしているサークルもあります。
職場のいろいろな問題に対して、ベテランは、こういう風に改善すればよいとだいたいわかっていると思います。しかし、それは固定観念にとらわれた、必ずしも良いアイデアとは限りません。新人に『QCサークル』誌を使って勉強させるうちに、ベテランには考えもつかないような斬新な改善案が出てくるかもしれないと、一方通行の勉強会ではなく、切磋琢磨するような、相互啓発のような勉強会を計画しているサークルもあります。
ベテランは今ある問題に対して改善策を考えますが、新人はそこをあまり理解していないので、そもそもその作業自体を止めてしまえばよいと考えるなど、今まで考えもしなかった斬新なアイデアも出て、刺激になると考えています。

・事務局が主体となって、本誌を用いた勉強会のようなものを行っていますか。

先ほども申し上げたように、『QCサークル』誌はコミュニケーションツールとしてとらえています。特に本誌を用いて事務局主催の勉強会は実施していません。サークル独自の勉強会に任せていますが、ときどき難しい質問が事務局に寄せられますので、私たちもおちおちしていられません。

                      『QCサークル』誌を使った勉強会   

本誌に対するご要望、取り上げて欲しいテーマ、期待することなどがありましたら、お聞かせください。

サークルからたくさんの意見が寄せられました。大きくは、次の6つです。
1つ目は、コロナ禍における会合の開き方とか、職場の情報共有の仕方などの活動事例を、できればシリーズ化して連載して欲しいです。  2つ目は、当所の現場の情報共有は社内メールで行っていますが、操業に追われてなかなかメールを見ることができず、LINEなどでの意見交換が多くなってきているようです。他の会社ではどのような方法で情報共有しているのかを知りたいです。
3つ目は、QC初心者向けの記事を充実して欲しいという声です。今あるQCの事例は基礎知識がないとなかなか付いていくことができません。新人が勉強用に使っているということもあって、できれば1つの新人サークルを追いかけた連載、サクセスストーリーのような物語風のものがあると嬉しいです。
                                サークルのみなさん                    4つ目は、具体的な問題解決のストーリーが知りたいという希望です。いろいろな事例がありますが、成果報告的に、ぐっと簡潔にまとめられているため、なぜそのような問題解決方法にたどり着いたのかという、途中経過の部分をもっと解説して欲しいと言っていました。           5つ目は、活動テーマをアプローチ別とか、手法別にカテゴライズしたものがあれば、嬉しいです。例えば、能率改善という事例であれば、手法のカテゴリー別に分けた形のものがあればいいと思います。また、例えば真因追求では、どのような手法が使われているかを知りたいとき、全部の事例を読まないとそれがわからないので、カテゴライズしたものがあると役立つと言っています。
最後の6つ目は、これはみんなが悩んでいることです。関西製鉄所では年4回の社内大会を開催していますが、発表大会におけるパワーポイントの見せ方について、できれば連載で教えて欲しいです。2年くらい前から、QCサークル全国大会に参加していますが、他社はみなさんパワーポイントが本当に上手で、参加したサークルは理解できるのですが、参加していないサークルは理解できなくて、社内大会においてもますます差が開いて悩んでいます。

・最後になりますが、コロナ禍により社会・経済が混迷していて、多くの業界が困難な状況に陥っていています。ウィズコロナ、アフターコロナ、さらにその先を見据えた時に、JK活動に期待することをお聞かせいただきたいと思います。

このインタビューを受ける前に、JK連合会の会長に相談したところ、次のような嬉しいメールをいただきました。
「2020年度は、コロナ禍におけるJKの活動で、当初掲げていた方針がどれも満足のいく結果とはなりませんでした。しかし、こんな状況だからこそ学んだものも多くありました。たとえば、テレワークの拡大や三密回避による限られた時間の中で、いかに目標を達成するか、時間の重要性と有効活用を認識し、数々の工夫をして乗り越えてきました。失敗も多かったのですが、多くのことを学ぶことができました。大変な年でしたが、今まで以上に真剣に、楽しくJK 活動に取り組めたことに感謝しています」
なんだか嬉しすぎて、ちょっと涙が出たのですが、このメールを読んだときに、 JK 活動ってこういうことだと、私自身も再認識しました。
コロナ禍であったり、ゼロカーボンスチールへの挑戦という橋本社長の方針があって、これからもいろんな課題を解決していかなければなりませんが、どんな状況下にあっても、いかに JK活動で職場を盛り上げるか、どんな明るい情報発信ができるかというところに重きを置きたいと思っています。

(まとめ 日科技連出版社 戸羽節文)

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【日本製鉄株式会社 関西製鉄所】
□操業開始:1942年4月(住友金属工業㈱ 和歌山製鐵所)
*2020年4月 和歌山製鉄所、尼崎製造所、製鋼所を統合・再編成し、関
西製鉄所発足
□従業員数:約5,200名(20年3月時点)
□事業内容:石油掘削・天然ガス開発向けや高効率発電所のボイラーチューブ向けの継目
無鋼管(シームレス鋼管)の製造など
□ホームページ:https://www.nipponsteel.com/works/kansai/index.html