『QCサークル』誌、こうして活用しています! 第6回 日本製鉄株式会社 九州製鉄所 大分地区
このコーナーでは、『QCサークル』誌を多部数ご購入いただいている企業・組織の推進者のみなさまにインタビューして、『QCサークル』誌の効果的な活用方法や勉強方法などを紹介していただきます。みなさまの『QCサークル』誌活用のヒントにしていただければと思います。
第6回目は、日本製鉄株式会社 九州製鉄所 大分地区 JK事務局の浪江慎二主査にお話を伺いました。
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・貴社橋本社長から、「自らの仕事をゼロから見直し、課題解決力を強化することが求められている。毎日の仕事の中で、自らが変わったかを問うてほしい」というメールが全社員にあったそうですが、このメールによって、意を新たにされた方も多かったのではないでしょうか。
1970 年、新日本製鐵発足時に、社員に対して、新日鐵社員として必要な能力の基本的な目標を示した「社長達第一号」が発行されました。その中に示された「自主性を発揮し、明日への挑戦する気概をもつに必要な能力の目標」は、それまで育ててきた「小集団改善活動(QC 活動、ZD運動)の理念」のすべてを言い尽くしていました。
そして、「社員の自己啓発なくして、企業の発展はあり得ない。企業として、常に社員の自己啓発・成長を期待し、これを支援する」 ということも示されていたため、「JK 活動」を企業内における自主的活動として体系づけ、積極的に推奨・支援することとなりました。
このことは、大分地区では機会あるごとに研修などで教育し、浸透していると思いますので、今回の社長からのメールを理解し、志を新たにされた方は多いと思います。
JK事務局の浪江主査
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・貴地区では、2010 年前まで多部数ご講読いただいていましたが、その翌年から大きく減少され、おそらく推進事務局のみのご講読になったものと思います。その後、2015 年から復活していただき、2010 年以前より多くの部数をご講読いただくようになりましたが、大幅な購読減をされた理由は何だったのでしょうか。
私がJK事務局を担当してしばらくした頃、事務所内に積まれた段ボール箱の中に、大量の『QCサークル』誌を発見しました。購入するものの、長らく現場に行きわたっておらず、無駄に思われましたので購読部数を減らしました。
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・では、購読を復活され、さらに以前にも増してご講読部数を増やしていただくようなった理由は何だったのでしょうか。ちょうど当時の進藤社長のトップインタビューの時期とも重なりますが。
進藤社長(当時)のトップインタビューもきっかけとしてありましたが、その少し前に、私が日本科学技術連盟の推進者コースを受講した際、『QCサークル』誌の中身についてのレクチャーがあり、『QCサークル』誌の創刊時の理念を知りました。
そこで、『QCサークル』誌を改めてじっくり読んでみると、大変わかりやすく、新しい情報も、身近な記事も多いことから、現場のいろいろな層(スキル)に読んでもらうことで、それぞれのステージで得るものがあるのではないかと思ったからです。
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・講読部数増によって、JK活動そのもの、あるいはリーダー、メンバーの方や管理者の方に何らかの変化がありましたか。
購読数との因果関係はわかりませんが、JK活動を活性化させるために、様々な取り組みを実施しました。たとえば、現場から派遣されてくるJK連合会幹事の外部研修(日本科学技術連盟主催)への派遣、推進者のQCサークル全国大会への派遣などを従来の倍に増やすなど、予算が減る中で経費削減の工夫をしながら、できるだけ多くの推進者が仕事を離れて勉強する機会を設けました。その結果、テーマ件数が増えると共に内容も年々充実してきたように感じます
また、『QCサークル』誌を事務所単位で直接配達するようにしたことで、目に留まる機会が増えたのか、外部大会発表時の資料作りの参考にする、手法勉強会の教材に利用するなど、『QCサークル』誌を活用する例が多く見られるようになりました。
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・レベルアップのためのツール、活性化のためのツール、自己啓発のためのツールなど、本誌に期待される目的はいろいろと考えられますが、貴所のJK活動における本誌の位置づけをお聞かせください。
何か知りたい時、発表する機会がある時、勉強したい時などに、手元にあって、すぐに読むことができ、参考にすることができる教材といった位置づけかと思います。書籍よりも雑誌の方が機動性がよいというか、休憩所の新聞の横などに置いているので、気軽にパラパラとページをめくっているうちに新たな発見があったりするようです。
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・現在、貴所では、雑誌がお手元に届いた後、どのような形で配付されていますか。たとえば、室単位やサークル単位など、配付方法を教えてください。
先ほど、事務所内に積まれた段ボール箱の中に、大量の『QCサークル』誌があったと話しましたが、これは配り方が悪かったのだと思います。そこで、日科技連出版社から、各工場の詰所(休憩所・会議室)に直接配達してもらうようにしました。これにより、どこかに滞留するということがなくなりました。
管理は、JK連合会の幹事にしてもらっています。
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・実際に活動されているリーダー、メンバーの方々の本誌に対する評価はいかがでしょうか。
このインタビューを受けるに当たって、事前にアンケートを取りましたが、概ね評価は高かったようです。
他社の活動を知る良い機会であり、自分たちも負けずに頑張ろうという気が起きるという回答がありましたが、これは大変重要なことで、他のサークルがこの話を聞いて、「じゃあ、うちのサークルでもどんどん使おうじゃないか」と、モチベーションアップのきっかけとなるからです。
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・活用、参考にしていただいている記事、評判の良いのはどの記事でしょうか。また、どのように活用、参考にされているかについてお教えください。
一番評判がよかった記事は活動事例で、次がQC手法講座、そしてトップメッセージが興味深いという回答もありました。
他社ではどのような改善活動を実施しているのか、また類似した職種の改善事例が参考になっているようです。改善活動の進め方自体も参考になっているとの回答もありました。
どのように活用、参考にしているか、事前アンケートでは、次のような回答がありました。主なものを挙げます。
・改善活動の在り方
・活動事例の現状分析、活動の流れや進め方
・問題・課題に対する着眼点や発想
・活動事例の学びどころやワンポイントアドバイス
・QC手法の使い方、活用法
・グラフの見せ方
・QC手法の教育資料として記事から抜き出して利用
・Excel画の書き方
・発表資料作成の際の参考(特性要因図、系統マトリックス図)
・組内での手法勉強会
おもしろいところでは、今の若手はコロナ禍により出張が制限されて、なかなか外の情報が得られないため、『QCサークル』誌を見せて、他の会社の活動を仕入れているという回答もありました。
JK活動風景
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・本誌をより有効に活用してもらうために、たとえば、“今月の読みどころ”のようなものを発信するなど、事務局、あるいは上の立場の方から、何らかのしかけをされているでしょうか。
特にありませんが、構内にJK道場という場所があり、質問や悩みの相談を受けています。たとえば、課題達成型についての質問や、会合時間がうまく取れないといった悩みを受けた際など、『QCサークル』誌には何らかの関連した記事が載っていますので、それを使って説明したりしています。
また、協力会社を含め係長クラスの支援者がよく立ち寄ってくれています。仕事終わりに立ち寄って、発表大会に向けてQCストーリー検討や発表練習をするサークルもあり、内容のわかりづらいところや表現方法、手法の使い方など、推進事務局が指導したりしています。
ここはコミュニケーションの場であり、横のつながりの拠点になっています。
JK道場
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・製鉄所の構内で働く方の人数は、圧倒的に協力会社の方が多いと聞いています。協力会社の方々も含めて勉強会のようなものを開催されていますか。
協力会社の方々もメンバーの一員として活動しています。年に何回か、協力会社の方から勉強会の要請があり、推進事務局やJK連合会が講師となって、協力会社主催での勉強会を、不定期ではありますが実施しています。
パワーポイントの使い方、手法の正しい使い方、エクセル画の書き方など、『QCサークル』誌の記事を利用して指導しています。おかげさまで、良い評判をいただいています。
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・本誌に対するご要望、取り上げて欲しいテーマ、期待することなどがありましたら、お聞かせください。
ITを活用した情報収集の極意など、活動時間が制約されている中で活用できるアイテムや方法などの記事があるとよいと思います。
デジタル化、自動作成など、ITをうまく使っている事例や方法、我々では思いもつかないような使い方の記事があると、参考にしやすいです。
また、QCサークル活動を通じた人材育成についての記事があると参考になります。
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・最後になりますが、コロナ禍により社会・経済が混迷し、多くの業界が困難な状況に陥っていています。また政府が掲げたカーボンゼロの公約は、特に鉄鋼業界にとっては大きな課題となっているものと思われます。ウィズコロナ、アフターコロナ、さらにその先を見据えた時に、JK活動に期待することをお聞かせください。
どのような環境にあっても、現場で働く一人ひとりの知恵と、問題や課題の解決に挑戦する気概が大切です。JK活動の魅力は、現場の知恵と努力で会社の経営に参加できるところにあり、活動者が自主的に展開するところに大きな特色があります。
したがって当社では、JK活動を「社員の自主的・主体的な創造性発揮の活動」の場として明確にし、「職場の問題解決の場において展開される活動」と位置づけています。 いわば「職場の問題点を教材にして、能力向上を目指して自主的に展開される活動」といえます。
活動の目的が「社員の能力向上」と「職場の活性化」にあり、その結果として「企業の繁栄」がもたらされるのです。そのことが日本製鉄JK活動の基本理念にまとめられています、
日本製鉄JK活動の基本
1. 社員一人ひとりが能力を高め、創造性を発揮して自己実現をはかる
2. 互いに人間性を尊重して、活力のある明るい職場をつくる
3. 活動を通じひいては社業の発展に寄与し、社会に貢献する
このように、働く人が人間らしい充実感や生きがいを感じられる職場づくりをJK活動に求めています。 また、失敗をマイナスではなく、プラスとしてとらえるのがJK活動の特徴です。
この基本理念を変えることなく、共有し、継続することが大切だと思います。
(まとめ 日科技連出版社 戸羽節文)
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【日本製鉄株式会社 九州製鉄所 大分地区】
□所在地:大分市西ノ洲一番地
□設 立:1971年
□従業員:2,350人
□事業内容:熱延コイル、厚板、鋼管、熱押形鋼、スラブ
□ホームページ:https://www.nipponsteel.com/works/kyushu/index.html
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